新車試乗レポート
更新日:2024.03.31 / 掲載日:2024.03.31

新型スイフト詳細チェック〜公道試乗で最終結論〜

走りも使い勝手も超優等生! 新世代モデルの実力にズームイン

スモール2BOXの優等生モデル「スイフト」が、フルモデルチェンジを実施。7年ぶりに登場した新型は、もともと高く評価されていた走りの魅力に加えて、先進安全機能の強化や充実したITコネクトなど見どころ満載! 良質なクルマを求めるユーザーにとって、見逃せないモデルになりそうだ。

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

新型スイフト 公道試乗

パワートレーンの一新で
走りの質がパワーアップ

ス モール2BOXのモデルたちは、取り回しやすい軽量かつ小型の車体を採用することで、経済性と実用性を上手に融合させていることが強み。フルモデルチェンジした新型スイフトも、この基本セオリーに忠実に則っている。
 実際、全長は3.8m強で、全幅も1.7m未満に収まっている。乗用登録車としても最小クラスになるが、それでいて後席の居住性を配慮した設計が与えられていることがポイントだ。この設計思想は先代でも採用されているのだが、最近は後席や荷室の余裕を重視しないモデルも珍しくないだけに、実用性を重視する設計は、逆に新鮮に思える。
 ただし、優れたキャビン実用性が、新型の最大の特徴というわけではない。フルモデルチェンジの最大の見どころは、走りの進化だ。
まず注目は一新されたパワートレーンだ。搭載エンジンが1.2ℓということは同じだが、4気筒から3気筒へ変更。さらに大量のEGR(排ガス再循環)による急速燃焼技術を用いることで、省燃費性能をさらに追求している。だが、それ以上に進化を感じるのが、力感やドライバビリティの改善だ。
 特定の速度域で3気筒を感じさせるものの、巡航時のエンジン回転数は2000回転前後で推移していくが、この状態からの加速がとてもスムーズ。緩加速程度ならばアクセルを深く踏み込む必要もなく、回転上昇もほとんどない。
 踏み込み直後のトルクの立ち上がりも上々。マイルドハイブリッドの電動アシストの恩恵もあって、タイムラグや鈍りをほとんど意識させない。パワートレーンの統合制御とマイルドハイブリッドの相乗効果により、並みの1.5ℓ車以上の力感と洗練感のあるドライブフィールを実現している。
 ただし、高速走行や登坂路での加速性能は1.2ℓ車相応。軽量ボディに助けられているとはいえ、急加速時には高回転が強いられ、伸び感はほどほど。穏やかなペダルワークでこそ、加速も燃費も活きる特性だ。

出来の良いフットワーク
硬めでも不快さは皆無

 もうひとつのポイントがフットワーク。安心と信頼感に富んだ操縦感覚と、乗り心地の雑味の少なさに驚かされる。
 タウンカーとしては乗り心地は硬めで、路面の舗装剥がれや補修跡の段差がきっちりと伝わってくるイメージ。荒々しい突き上げ感覚はないが、ユーザーによってはもう少し柔らかなアシが良かったと思うかもしれない。
 しかし、この硬さは不快さとは無縁。細かな動きに減衰感があり、車軸周りの揺動も含めて揺れ残りが少ない。軽いクルマにありがちな煽られ感も少なく、腰の据わった挙動ぶりが頼もしく思える。
 ハンドリングに関しても浮ついた挙動が少ないことが好印象。操舵に対して過不足ない回頭と素直なラインコントロール性を実感させてくれる。うねった路面でも方向性の乱れが少ないため、操舵補正の必要がない。運転が上手くなったかに思える操縦感覚を楽しめる。
 ちなみに4名乗車でも試乗してみたが、性能面の大きな変化は感じられなかった。このクラスは乗車人数や積載量の影響を受けやすいモデルも多いが、多人数乗車を苦にしないことも、新型のチューニングの妙味だろう。
 停車保持機能付全車速型ACCや、前走車追従制御も備えたLKAなど、ADAS機能も充実。この試乗では試せなかったが、シャシー性能と合わせて高速長距離適性もかなり高そうだ。要するにタウン&ツーリングで活躍できるということだ。
 純正ディスプレイオーディオを装着し、ちょっと贅沢な内装も施された最上級グレードのハイブリッドMZで216万7000円から。ストロングハイブリッドモデルには及ばないが、燃費もトップレベルの実力を持つ。生真面目な印象が強めだが、スモール2BOXをリードするモデルになるのは間違いないだろう。

主要諸元(HYBRID MZ 2WD) ●全長×全幅×全高(mm):3860×1695×1500 ●ホイールベース(mm):2450 ●車両重量(kg):950 ●パワーユニット:1197cc直3DOHC(82PS/11.0kg・m)+モーター(2.3kW/60Nm) ●トランスミッション:CVT ●WLTCモード総合燃費:24.5km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ディスク(R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)トーションビーム式(R) ●タイヤ:185/55R16
新開発された新型のエンジンは、排気量こそ従来型と同じ1.2ℓだが、気筒数を4気筒から3気筒に変更。燃費性能を強化している。
ボディ軽量化に伴い、サス周りも新設計。ふわついた挙動を抑える特性を強化したことで乗り心地も良化。走りの質感の向上も新型の強みになっている。

新型スイフト エクステリア&パッケージング

外観はキープコンセプト実用的なパッケージングも踏襲
 プロポーションは先代から大きく変化していない。デザインも先代のイメージを踏襲し、ぱっと見ではビッグマイナーと言われても納得してしまうくらいだ。全長とホイールベースはスモールクラスの中でも小さいのだが、キャビン後半部の絞り込みを抑えた外観デザインを採用したことで、2BOX車の中ではキャビンボリュームが大きく見えるタイプだ。最小回転半径も軽自動車を除けば最小クラスとなる4.8m。車両感覚を掴みやすいデザインもあって、優れた取り回し性能を実現している。

グリル周りの存在感は少し控えめになったが、ヘッドライトのLED化などで機能性を強化。
ハイブリッドMZの16インチアルミホイールは、切削加工&ブラック塗装で上級感をアップさせている。

新型スイフト キャビン&ユーティリティ

サイズ以上の広さ。装備機能の充実ぶりも見逃せない
 外観に比べると、インパネ周りは先代から大きく印象を変えている。プレーンかつ機能的に纏められているのは先代と共通しているが、インパネ上部に大型ディスプレイが配置されるなど、先進感はかなり強まっている。キャビンスペースは、後席のヘッドルームや車窓視界に配慮した設計が見どころ。余裕を持たせたことで、サイズ以上に広さを感じられる。4名乗車を苦にしないことも、大きなアドバンテージだ。

パッド型のディスプレイオーディオ(もしくはナビ)をインパネ上面に配置するなど、見た目だけではなく利便性も強化。新世代モデルにふさわしい内容を持つ。
開口部から床面へは段差が生じるタイプだが、荷室の広さは十分。スモール2BOXの基本性能をしっかりと煮詰めている。
12Vのリチウムイオン電池と2.3kWのモーター(ISG)を組み合わせたマイルドハイブリッド車も選択可能。燃費も含め走りが進化した。
デュアルセンサーブレーキサポートⅡは、従来型システムよりも画角が広がり検知対象も拡大。全車速ACCやBSMなども用意されている。

新型スイフト 最終結論&オススメグレード

万能タイプの実用モデル。コスパの良さはトップクラス
 スポーツ&ツーリング性能の高さが評判の「スイフトスポーツ」の存在もあって、マニア向けのモデルのように誤解されそうだが、スイフトの本領発揮は実用車としてのバランスの良さにある。
 新型はスズキ・マイルドハイブリッドの最新型として開発されたパワートレーンが与えられるなど、その方向性はマニアに向けたモデルでない。後席も重視したパッケージングや、スタイル最優先としない内外装デザインなど、スイフトは限られたサイズと重量で実用性向上を求めている。基本を崩さない真面目なクルマだ。
 タウンユースを基本にしながらも長距離用途にも安心して使える実用的なモデルというのがその本質。欲を言えばもう少し余力があると嬉しいが、ドライバビリティや燃費、価格を考えれば満足度は高い。タウン&ツーリングのどちらも気軽に使えるクルマを求めるなら最有力の選択になるだろう。

オススメグレード:ハイブリッドMZ(2WD) 価格:216万7000円

実用優先ならば中間グレードのMXでも不足ないが、内外装まわりのグレードアップに加えて、ACCの停車保持機能、ディスプレイオーディオが装着されるなど、機能装備も充実する。価格差(約18万円)を考慮しても、最上級グレードのMZの方が買い得感が高い。

この記事の画像を見る

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

内外出版/月刊自家用車

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

この人の記事を読む

オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ